仏さまの願い
(一言法話)

あなた独りじゃない ー奇跡ー

2024.08.26

 私は3年前に癌の告知を受けました。癌と言われて死を連想しない人はいないと思います。私はこれまで多くの人の死に関わってまいりましたが、いよいよ自分の事となると・・・心は乱れ、どのような死を迎えるのか、との恐怖と自分がいなくなったら家族やお寺はどうなるのか、という不安が一気に押し寄せてきました。何より妻を悲しませてしまうことがなんとも辛かったです。

 

 最初の入院の前に二人で気分転換にドライブをした時、妻がふいに言いました「あなたは死なないと思う」と。慰めてくれているのだろうと思い、私はただ「ウン」と曖昧に頷いていました。

車の中ではさだまさしさんの「奇跡」が流れていました。私と妻は昔からさださまさしファンなのです。

 

-奇跡-さだまさし

  「どんなにせつなくても 必ず明日は来る

   ながいながい坂道のぼるのは あなた独りじゃない

   僕は神様でないから 本当の愛は多分知らない

   けれどあなたを想う心なら 神様に負けない

   たった一度の人生に あなたとめぐりあえたこと

   偶然を装いながら奇跡は いつも近くに居る

 

   ああ大きな愛になりたい あなたを守ってあげたい

   あなたは気づかなくても いつでも隣を歩いていたい

   ああ大きな夢になりたい あなたを包んであげたい

   あなたの笑顔を守る為に多分僕は生まれて来た」

 

 

大きな愛になって、あなたの近くに居たい、

いつも隣を歩いていたい、あなたを包んであげたい・・・

 

ふと気づいたのです。

「大きな愛」ってまさしく仏さまの大慈悲、「南無阿弥陀仏」の事ではないか?

そう受け止めさせていただいた時に、妻が言った「あなたは死なない」とは、死んで消えてゆくのではなくて「あなたは私の南無阿弥陀仏になってくれるんでしょ」と言ってくれたのではなかったか。私は、たった一度の人生に奇跡のように巡り合えた、妻の、子供たちの、ご門徒のみなさんへの大きな愛に、南無阿弥陀仏になれるのだった、と思えたのです。

 

 仏になると、この世に残した大切な人の悲しみを深く深く知ることになります・・・あなたは大切な人の悲しみ苦しみを知って、ほおっておくことができますか?大切な人の苦しみに対して何もできないほどつらい事はありません。

けれども、大きな愛になれるのです。残してゆくあなたを、包んであげられるのです。

それが私が仏になると言うことです。

 

 親鸞さまは「阿弥陀さまのはたらきによって浄土に生まれ仏となる往相と、もう一つ、すぐさまこの世に還って様々な縁を通し有縁の人々に仏さまの願いを伝えようとはたらく還相の回向が、私たちに与えられる」と教えてくださいました。

還相の仏となると言うことは、私は仏となって残された人々に寄り添える、優しく包み込み、慰めることができる、導くはたらきができる、と言うことなのです。

 

そうでした

阿弥陀さまは私を「仏にする」とお誓い下さっています。

ですから「あなたを守る為にたぶん僕は生まれてきた」という歌詞が

「あなたを守る為に、僕は浄土に生まれて仏となり、この世に還りくる」

と受け取れた時、私の命の終わりに当たってこれから何をなすべきか、が解決できたように思えます。

 

大切な人を亡くしたあなたへ

私は大きな慈悲を持って、あなたを包んでいるよ。

南無阿弥陀仏となってあなたのそばにいるからね。

 

そっか、どんなに辛くても、寂しくても、私は一人じゃない。

これからの人生、共に歩んでくれる仏さまになってくれたんだよね。